
近代、西洋医学の目覚しい発展により、細菌・ウイルスなどによる感染症や、外傷などの外科的処置を必要とする急性疾患などの領域において、私たちは多大な恩恵を受けてきました。しかし、難治性と呼ばれる疾患により、苦しめられている人々が未だに多く存在する事実も見逃すことは出来ません。糖尿病・高血圧・高脂血症・心臓病などの生活習慣病、ガン・潰瘍性大腸炎・クローン病・膠原病などの慢性病に対して、対症療法ばかりが先行し、根本的な解決には至ってないのが現状です。
なぜこれだけ医学が発展しているのにも関わらず、根本的な治癒に至らない疾患が多く存在するのでしょうか?そこで、それらの疾患に対し有効な手立てを持つ医学であると、近年脚光を浴び始めたのが東洋医学であります。これは西洋医学よりも東洋医学のほうが優れているというような単純な話ではありません。それぞれの医学には得意分野があり、近年難治性と呼ばれる疾患の多くは、西洋医学の不得意とする分野にある疾患であるから治りにくい。また、西洋医学が不得意とする疾患は、意外と東洋医学の得意とする疾患であることが多い。これが東洋医学が脚光を浴び始めた一つの要因だと思われます。
鍼灸医学はその東洋医学の範疇にあり、また中心に据えられるべき医学であります。なぜなら、東洋医学最古の古典「黄帝内経」は鍼灸を中心に述べられており、漢方薬による治療はそこから派生して生まれてきたものだからです。
鍼灸医学は科学的に解明されていないから、迷信のようなものだと誤解されている方もいると思われます。しかし、3000 年以上もの悠久の年月を経て、ある病においてはどのツボにどのような反応が現れ、そのツボに対してどのような処置を施せば病を治癒に導くことができるのか。そのような実践を理論化し、そしてまた実践するという繰り返しの中で継承されてきたものが伝統鍼灸医学であり、その理論は決して西洋医学にひけをとるものでなく、誇りを持つべき医学であると自負しております。
その素晴らしい医学も、ここ100年以上の間は肩凝りや腰痛などの運動器疾患に対する慰安的な物理療法として扱われてきました。その原因として明治維新以来の政府の方針が大きく影響を与えていることと同時に、鍼灸師自体の質の低下も大きな要因となっているように思えてなりません。鍼灸師の中でも上記に述べたような東洋医学の得意とする分野の疾患を、鍼灸で治すことが出来るという事実を知らない人のほうが多いというのが現状なのです。
これらの現状を打破するには、まず自分自身が自己の学術・技術を研鑽し、多くの病に苦しんでいる人達を治すこと。また、東洋医学の理論を一般の人達にわかりやすいよう解説し、日々の臨床の中で啓蒙活動を行うこと。まずこういったことから始めていくしか無いと思っております。
鍼灸医学の素晴らしさはその理論もさることながら、やはり実際に患者の身体に手を触れ、鍼を通じて気・心・魂を通わせることが出来る点にあると感じております。
師からは「鍼一本で人の運命を変えるような鍼医者になれ」と日々激励を受けております。その使命を一生かけて果たしていく事が師に対する恩返しであり、私自身の生きる意味だと思っております。
平成 20 年 4 月 1 日
輝鍼灸院 院長原 元氣